2012年10月15日月曜日

マイ・ライト・ハンド




先日、編集者兼ライターの二村志保氏と天満橋でランチをいただきながら、仕事と健康という二大テーマについて語り合った(恋愛と美についてはほとんど話題にならなかった)。

健康面において今一番自分を悩ませているもの、それは右手首の痛みである。「手根管症候群」とも呼ばれるこの症状、原因ははっきりし過ぎるほどはっきりしている:

いい加減、手を酷使するのをやめなさい!(他が原因でなる場合も多いのでご注意。)

二村氏も笑っていたが、朝から晩までPCのキーを叩き、それが終わったら猛烈な勢いで野菜を刻み、余暇はアクセサリーをせっせと作っている。先週末は実家においてあるピアノを数時間も弾いた。筋トレと称してウェイトを持ち上げるわ、腕立て伏せはするわ、自分が手なら、とっくの昔に反乱を起こしているだろう。

特にアクセサリーは、最近ブログを更新していないからといって、もう早飽きたんだろうなどと思わないでいただきたい。この間ひたすら新シリーズの商品開発に取り組んでいたのだ(KAKiブログ参照:http://kaki-apple.blogspot.jp/)。

手が動かなくなったら、生活のすべてにおいて待ったなしに困る。とりあえず、今晩から手を使うのを控えよう。用事のある方はできるだけメールではなく、電話をください。

2012年10月9日火曜日

考えごと



 

先日、初めて福島原発事故関連の案件が入ってきた。放射能汚染の心理的影響に関するものだったが、事故から1年半以上が過ぎ、データの蓄積に伴って、今後こうした報告が増えてくると思われる。

しかし、そのような生々しい報告に対する世界の関心はというと、人間自分がイタい思いをするまでは、所詮は対岸の火事。 チェルノブイリ原発事故にしても、同国の報告書に対する国際機関の態度は、科学的慎重さというより、無関心が先立つように見える。

日本も例外ではなく、以前はチェルノブイリなど、社会主義国家のありえない不手際が招いた事故として、冷ややかな目で見ていたのではないだろうか。

その昔、仕事でスロヴァキアの田舎へ行った際、黒く美しい森を指しながら、地元住民が「ここで採れるきのこや木の実は最高だった。でも今じゃ放射能に汚染されているから採取は禁じられている。老人達は採って食べてるけどね」と話してくれたのを思い出す。

その時、この人たちはロシア人のことをどう思っているのか、考えるだけでも暗い気持ちになったが、この図式でいうと、今回の原発事故について日本人は、ただ被災者・被害者として発電所、東電、日本政府ら悪玉に腹を立てているだけでは済まない立場にある。

2012年10月1日月曜日

浅山美由紀展:BORDER 〜永遠に変わらないものはない〜





この土曜日は京都・西陣の空まめさんでKAKi作品の入れ替えをし、心のこもったおばんざいとおもてなしで心身ともに養われた。


その後、ワクワクしながら大阪に出向き、関西ではわりと名の知れたアーティスト・浅山美由紀氏の久々の個展『BORDER ~永遠に変わらないものはない~』を観た。これまでインスタレーションやオブジェが中心だった氏の、初のオール平面作品展となる。

BORDER、すなわち「境界」。この言葉をどう解釈するかは観る側の自由だが、もともと細胞などの有機的モチーフの目立つ浅山作品にあって、今回もまず浮かんだのが「細胞壁」としての境界線だった。内外の圧の違いに乗じて必要な物質を取り込み、増殖・拡大し、不要なものは排出する。

この境界線が、東北大震災によって、そして自身の最近の治療体験によって、揺らぎ始めたと浅山氏は語る。



     浅山氏のアーティストトークの様子
 


たしかに、細胞のような細かいドットは、線の内外にうごめきながら分布している。細胞壁同様、境界線には目に見えない小さな穴が無数に開いていて、有機的交換(交流)がなされているようだ。いや、あるいは最初から、内外などという境界はあいまいでしかなかったのか。

もうひとつ感じたキーワードがある。それは「自己治癒(セルフ・セラピー)」。脳血管障害や精神疾患のためのリハビリテーション・アプローチとして、点描や貼り絵などの繰り返し作業が用いられることが多いが、今回作品群に描かれた無数のドットに、大病を患った氏の自己治癒プロセスを垣間見た思いがした。このような形で提示されたプロセスは、特に自己治癒を必要とする者にとって、感覚レベルで理解できる一つの道標となる(たとえば草間彌生が先駆けて実践しているように)。

ドットが描き入れられなかった余白部分は、波にもまれ、潮に浄化されて、白く強くなった貝がらを思わせた。
 

大阪・天満橋のあーとスペース夢玄にて、10月7日(日)まで開催中↓


 

浅山美由紀ブログ:  
http://www.eonet.ne.jp/~blcart/diary/diary.htm