2012年2月27日月曜日

こねこ(КОТЁНОК)














 


最近観たビデオのうち、ヒットは1996年製作のロシア映画『こねこ(КОТЁНОК)』。猫、子ども、音楽、サーカス…と、自分の好きなテーマをてんこ盛りにした上、驚くほどもっさりした感性と、愚直なまでに優しい目線と、童話のような残酷さをもって作られた作品だ。 

元祖「ダサかわ」というべき、こうしたロシア情緒は、他にも有名な人形アニメ『チェブラーシカ』や、アントン・チェーホフの短編『可愛い女』といった作品の中核になっている。ロシアの農民的モチーフが繰り返し登場するシャガール作品、近年のマトリョーシカ・ブーム、身近なところでは今は無き大阪フェスティバル・ゲート内のロシア書店&雑貨屋「ダーチャ」等、ロシア人気は近代化や洗練化への疲弊から生じた一種の懐古趣味なのかもしれない。

冷戦時代、ロシアはアメリカの敵=日本の敵であった。日米にとどまらず、西側全体から「冷血人間」扱いされていた。真っ向からソビエト批判したスティングの『ロシアンズ』なんかはその極みだったと思うのだけれど、『こねこ』に出てくるような愛すべきロシア小市民たちは、「ロシア人といえども自分の子どもはかわいかろうに」というあの歌を一体どう聴いたのだろう。

2012年2月19日日曜日

いのちの輝き:フルフォード博士が語る自然治癒力




















最近、「プレ更年期」という言葉を耳にするようになった。体温計のTERUMOは、「最近では30代後半~40代半ばの女性でも、更年期障害に似た症状に悩まされているケースが増えてきています。このようなケースが『プレ更年期』なのです」と定義している。

なぜそういうケースが増えてきているのかというと、全般的に(何でもかんでも)訴えが増えていることに加え、現代社会特有のストレスや環境汚染の影響が色濃い。つまり、昔の女性がじっと我慢してやり過ごしていたようなことを、何かと甘やかされてきた現代の30代後半~40代半ばの女性が声高に訴えているが、以前は存在していなかったか、それほどひどくはなかった様々な問題が起きているのも事実なので、それらとの関連で彼女らの訴えにも耳を傾けるべきだというわけ。もっとも、メタボ同様、こうした訴えに最も熱心に耳を傾けるのは製薬会社や医療機器メーカーだろうが。

あちこちで取り上げられているプレ更年期の症状を見ると、自分にも思い当たる点がいくつもある。いずれも、ほんの5年前には感じなかったことだ。閉経期を迎えているか否かの違いだけで、症状的にはプレも普通の更年期もさほど変わりないらしい。 

ここで自分の人生本の一つ、『いのちの輝き:フルフォード博士が語る自然治癒力』(翔泳社)のこのくだりを思い出す: 

「配偶者にたいする配慮でつぎに重要なのは、自分の健康を維持するということである。わたしの患者に、閉経期特有のイライラや不快感がひどくなり、夫にあたりちらして、結婚生活を破たんに追い込んだ婦人がいる。カルシウム剤をしっかりのんでからだのバランスをととのえれば治るものを、それをのむ余裕もなく、イライラを募らせていたのである」(第6章「健やかな生、穏やかな死」:結婚生活より) 

カルシウムは「骨や歯を丈夫にする」以外にも、筋・神経の重要な情報伝達を担っている。上記の文章は一見、「カルシウムが不足するとイライラする」という一般的誤解を煽るようだが、博士が言っているのは「更年期はホルモンのバランスが崩れ、普通なら非常に安定しているはずの体内カルシウム濃度が低下することから、骨粗しょう症や自律神経失調症などからだの不調をきたしやすい。それがイライラのもとになるので、まずはカルシウムを補給してからだのバランスをととのえよう」ということだと思う。 

自分が注目したのは、改善の余地があったものを、無知ゆえにこじらせ、大切なものまで失ったという、この気の毒なケースが示唆するところの教訓(女性たちよ、知恵を働かせ、自衛せよ)だ。 

本書はオステオパシー医学の権威であったフルフォード博士の知恵と愛に満ちあふれている。特に第7章「霊性を高める」には、どれほど大きな影響を受けたか計り知れない。その真価が本当に分かるのはこれからである。

2012年2月13日月曜日

イジス写真展:パリに見た夢
























「イジス写真展 -パリに見た夢」を観に、京都駅前の伊勢丹ミュージアムまで出かけた。

鑑賞前は心身ともにやや不調気味だったのが、鑑賞後は改善されて(というか、そんなものどうでもよくなった)、機嫌良くケーキを食べ、夕暮れの川べりを散歩して帰った。


仕事はそろそろ出口が見えてきた。片足を翻訳の海に浸したまま、気分転換にこまごまとしたものを作って遊んでいる。


野菜の絵本の切り抜きモビール
KAKiガーリーシリーズ:てんとう虫II
KAKiガーリーシリーズ:ピンクオパール

2012年2月9日木曜日

ヘラクレスの12の冒険


















 





義父に借りた少年少女世界の名作シリーズの『ギリシャ神話』を読み終えた。これで「全能の神」は一体何人いるのか(答え:一人。ゼウスとジュピターは同一人物)、アイルランドの作家ジョイスの『ユリシーズ』はなぜホメロスの叙事詩『オデュッセイア』と比べられるのか(答え:ユリシーズとオデュッセウスは同一人物で、ジョイスの小説はこの叙事詩のパロディだから)といった長年の疑問がだいぶ晴れた。 

考えてみると、そういった疑問の大半は、神話に出てくる人物の名前の発音が複数あることに起因している。ヘラクレスをハーキュリーズと言われても、すぐにはぴんとこない。ヘレンのような単純な名前でさえ、ヘレーン、ヘレーナ、ヘレネ、ヘレーネ、エレナ、エレーネ、とバリエーションを挙げたらきりがない。 

ギリシャ神話はラテン語、キリスト教と並んで西洋学の根幹を成しているといっても過言ではないので、後生のためにも日本は専門家を集めて一度この辺をきちんと整理した方がいいのではないか。 

ギリシャ神話に関しては少しすっきりしたが、今やっている仕事が難しく、毎日うんうん言いながら頭を捻っている。何かこう、ぱっと明るくはっきりしたものが欲しく、キンセンカの花を買ってみた。つぼみが12個ついている。



2012年2月4日土曜日

存在の耐えられない軽さ


















 


アマゾンで注文した『存在の耐えられない軽さ』のDVDが届いた。1968年のプラハの春を舞台に、男女3人の絡みを描いたミラン・クンデラの(難解な)ベストセラー小説をカウフマン監督が(かなりひも解いて)映像化した秀作。

映画好きな人間にとって、「一番好きな映画は?」と訊かれることが一番困るというが、自分はそういう時これと答えることにしている。なぜならこの悲劇的、喜劇的、社会的、歴史的、古典的、示唆的、象徴的、シニカル、リリカル、センシティブ、アイロニック、エロティック、ユーモラス、センシュアス、スタイリッシュな作品には非常に多くの要素が盛り込まれているので、他の好きな作品を10挙げるのに近い満足感が得られるからだ。 

そんなに好きな作品なのになぜか手元になく、これまで20回ぐらいレンタルして観てきた。が、近所のビデオ屋2軒いずれにも置いていないことを知り、ついに購入に踏み切った次第。