2012年2月27日月曜日

こねこ(КОТЁНОК)














 


最近観たビデオのうち、ヒットは1996年製作のロシア映画『こねこ(КОТЁНОК)』。猫、子ども、音楽、サーカス…と、自分の好きなテーマをてんこ盛りにした上、驚くほどもっさりした感性と、愚直なまでに優しい目線と、童話のような残酷さをもって作られた作品だ。 

元祖「ダサかわ」というべき、こうしたロシア情緒は、他にも有名な人形アニメ『チェブラーシカ』や、アントン・チェーホフの短編『可愛い女』といった作品の中核になっている。ロシアの農民的モチーフが繰り返し登場するシャガール作品、近年のマトリョーシカ・ブーム、身近なところでは今は無き大阪フェスティバル・ゲート内のロシア書店&雑貨屋「ダーチャ」等、ロシア人気は近代化や洗練化への疲弊から生じた一種の懐古趣味なのかもしれない。

冷戦時代、ロシアはアメリカの敵=日本の敵であった。日米にとどまらず、西側全体から「冷血人間」扱いされていた。真っ向からソビエト批判したスティングの『ロシアンズ』なんかはその極みだったと思うのだけれど、『こねこ』に出てくるような愛すべきロシア小市民たちは、「ロシア人といえども自分の子どもはかわいかろうに」というあの歌を一体どう聴いたのだろう。