
冬という季節が深まるにつれ、期待が高まっていく。
期待といっても別にクリスマスや正月を待ちわびているわけではなく、得体の知れない高揚感が奥の方からふつふつと湧き上がってくるのだ。
年々温暖化とプラスチック化が進む現代において、自分のこの気持ちをすくい取ってくれるものは見当たらない。
それは、ヴィヴァルディ作『四季』の協奏曲の一つ、「冬」につけられたソネットの中にある:
冷たい雪の中で寒さに震える
厳しい風が吹き付ける
絶えず足踏みしながら走る
寒さのあまり歯の根もあわない
暖炉の側で静かに平和な時を過ごす
雨に濡れる外
氷の上を歩く、ゆっくりと注意して
転ぶといけない
急いで足を滑らせ転んでしまう
また氷の上を歩く
急いで走れば氷は砕けて飛び散った
東南の風、北風、全ての風が争いながら
閉じた扉から入り込むようだ
これぞ冬
されど冬も喜び
この協奏曲の中では第1楽章が最も好きだ。
厳しい冬には独特の華やぎがある。
そういう意味では黒という色に似ている。