2011年11月30日水曜日

パッセンジャーズ・ハイ



















フィンランドへの出張が続いたある時期――。その時もヘルシンキ行きの機中だった。

ちびちびワインを飲みながら音楽を聴いていると、今まで味わったことのないような強い恍惚感とともに、自分の身体が宙に舞い上がるように感じて、思わず座席にしがみついた。

「ランナーズ・ハイ」ならぬ、「パッセンジャーズ・ハイ」。

機内環境とアルコールの影響もあるだろうが、その後何十回と飛行機に乗り、同じように(あるいはもっと多量の)アルコールを摂取したのに、このような体験は一度きり。

音楽の、いや、この曲のせいだと思う。ヴァイオリニストにとって難曲といわれるシベリウスの『ヴァイオリン協奏曲』。ちなみに自分が「飛んだ」のは、第二楽章の最後の山場だ。

その後たまたま手に入れたのはフェラス&カラヤン&ベルリン・フィルによるもので、やや派手すぎるきらいがあるけれど、名盤といわれるだけあって、とにかく演奏に艶がある。

シベリウスを生んだフィンランドの静謐でぼくとつとした空気を感じたいなら、やはりフィンランド人演奏家&フィンランド放送交響楽団によるこのアルバム(↑)がおすすめかも。